▽を押すことで各行動の根拠となる研究の概要を見ることができます。
自分の脳の健康を数字として見える化することで、現在地や目標を把握し、必要な行動の効果を実感できるため、より着実に脳を健康を維持できます。
健康な大人の脳の健康状態の指標(BHQ)をMRIを用いて算出し、身体的要因(BMI、血圧、1日の時間の使い方)と社会的要因(社会経済状況、主観的な幸福感、豊かさの考え方、将来や現在の考え方)との関連を調査しました。その結果、BHQは身体的要因と社会的要因の両方から影響を受けることが明らかになりました。
Nemoto K, Oka H, Fukuda H, Yamakawa Y. MRI-based Brain Healthcare Quotients: A bridge between neural and behavioral analyses for keeping the brain healthy. PLoS One. 2017 Oct 27;12(10):e0187137.
健康診断にて手軽に行える身体測定や血液検査は脳の健康状態についても教えてくれます。
健康な大人を対象とした大規模な研究では、肥満度(BMI)、肝機能(γ-GTP)、空腹時の血糖の数値が高い人は脳の健康状態が低下している傾向が示されました。
Watanabe K, Kakeda S, Nemoto K, Onoda K, Yamaguchi S, Kobayashi S, Yamakawa Y. Effects of Obesity, Blood Pressure, and Blood Metabolic Biomarkers on Grey Matter Brain Healthcare Quotient: A Large Cohort Study of a Magnetic Resonance Imaging Brain Screening System in Japan. J Clin Med. 2022 May 25;11(11):2973.
有酸素運動は脳の健康状態を維持するだけではなく向上させる可能性があります。
高齢者を対象にした研究では、6か月間、週に3回1時間の有酸素トレーニングを行うグループとストレッチを行うグループにランダムに分け、期間の前後で脳の健康状態の測定を行いました。その結果有酸素グループはストレッチグループと比較して脳の健康状態が向上しました。
Colcombe SJ, Erickson KI, Scalf PE, Kim JS, Prakash R, McAuley E, Elavsky S, Marquez DX, Hu L, Kramer AF. Aerobic exercise training increases brain volume in aging humans. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2006 Nov;61(11):1166-70.
例えばゴルフは情報を保持する力を向上させる可能性があります。
バトミントンなどのスポーツのトレーニングを行うことで脳の健康状態の向上が期待されます。
高齢者を対象とした研究では、6か月間、90分から120分のゴルフトレーニングを行うグループと、運動や健康的な食事に関する健康教育を受けるグループにランダムに分け脳機能テストを実施しました。その結果、ゴルフグループの方が健康教育グループに比べて情報を保持する力が向上することが示されました。
健康な大学生と大学院生を対象に、12週間バドミントンのトレーニングを行うグループと、特にスポーツをすることなく日常生活を過ごすグループにランダムに振り分けました。その結果、バトミントングループは非スポーツグループと比較して、運動を司る小脳の小領域間、および小脳の小領域と大脳皮質間の機能的結合が上昇することが示唆されました。
Shimada H, Lee S, Akishita M, Kozaki K, Iijima K, Nagai K, Ishii S, Tanaka M, Koshiba H, Tanaka T, Toba K. Effects of golf training on cognition in older adults: a randomised controlled trial. J Epidemiol Community Health. 2018 Oct;72(10):944-950.
Shao M, Lin H, Yin D, Li Y, Wang Y, Ma J, Yin J, Jin H. Learning to play badminton altered resting-state activity and functional connectivity of the cerebellar sub-regions in adults. PLoS One. 2019 Oct 1;14(10):e0223234.
地域団体への参加や外出などの社会的活動を行うことで脳の機能を保つことが期待できます。
健康な50歳以上の高齢者を対象とした複数の研究成果をまとめたレビュー論文では、ボランティアや地域団体での活動、旅行といった社会活動が、情報を保持しながら考える力、物の位置や向きを認識する能力、物事を処理する速度の維持に関わることが示されています。
Kelly ME, Duff H, Kelly S, McHugh Power JE, Brennan S, Lawlor BA, Loughrey DG. The impact of social activities, social networks, social support and social relationships on the cognitive functioning of healthy older adults: a systematic review. Syst Rev. 2017 Dec 19;6(1):259.
他者の感情を自分の感情として写し取ったり、相手の感情を理解する能力と脳の健康状態の良さには関連があります。
さまざまなタイプのつながりが脳機能低下リスクを減少させる可能性があります。
健康な大人を対象とした研究では、物語などの登場人物に自分を置きかえて想像する傾向や、他者に対して感情が喚起されやすい傾向が強い人は、脳の健康状態も良いことが示されました。
65歳以上13,984名を対象に約10年間の追跡データを解析した結果、「配偶者がいる」「同居家族と支援のやりとりがある」「友人との交流がある」「地域のグループ活動に参加している」「何らかの就労をしている」の5つのつながりがある人は、ひとつもないかひとつだけの人と比べて認知症発症リスクが46%低いことがわかりました。
Kokubun, K., Yamakawa, Y. & Nemoto, K. The link between the brain volume derived index and the determinants of social performance. Curr Psychol. 2022 Jan.
Saito T, Murata C, Saito M, Takeda T, Kondo K. Influence of social relationship domains and their combinations on incident dementia: a prospective cohort study. J Epidemiol Community Health. 2018 Jan;72(1):7-12.
人参やかぼちゃなど緑黄色野菜に含まれるビタミンAは、脳の活性化とものごとを思い出す力の向上との関連が示されています。
パプリカやブロッコリーなどに多く含まれるビタミンCを十分に摂取すると、脳とこころの健康を保つことが期待できます。
高齢者がカロテノイドサプリメントを1日12mg、1年間摂取するとものごとを思い出すテストの成績が維持され、学習時に脳活動が高まりました。また、カロテノイドの血中濃度が高いほど脳の神経線維の健康状態が保たれました。
複数の研究成果をまとめたレビュー論文では、ビタミンCを適切に摂取することが、脳機能やこころの健康状態の維持に関わることが示されています。
Lindbergh CA, Renzi-Hammond LM, Hammond BR, Terry DP, Mewborn CM, Puente AN, Miller LS. Lutein and Zeaxanthin Influence Brain Function in Older Adults: A Randomized Controlled Trial. J Int Neuropsychol Soc. 2018 Jan;24(1):77-90.
Plevin D, Galletly C. The neuropsychiatric effects of vitamin C deficiency: a systematic review. BMC Psychiatry. 2020 Jun 18;20(1):315..
日常的にナッツを食べることで、脳とこころの健康を維持できることが期待できます。
苺やラズベリー等のベリーフルーツを食べることで、脳の活性化や脳機能を維持することが期待できます。
ダークチョコレート摂取による疲労軽減は脳機能や脳の健康状態改善につながるかもしれません。
55歳以上の成人4,822人を対象に、ナッツの消費量と脳機能テストの関連を調べた研究では、1日に10g以上のナッツを消費する人で、脳機能テストのスコアが高い傾向があることが報告されています。
高齢者を対象にベリー食品やその抽出物の摂取の効果を検証した複数の研究のまとめにより、ベリーベースの食品やサプリメントが、脳活動やものごとをおぼえる機能に有益な効果があることを報告しています。
中年層を1日当たりポリフェノール635㎎に該当するダークチョコレートを4週間摂取したグループと、摂取しないグループにランダムに振り分けました。その結果、チョコレート摂取グループは、摂取しないグループと比較して、精神的・肉体的疲労が軽減することがわかりました。チョコレート摂取によって疲労を低下させることで、思考や行動を制御する能力、情報を保持する力、社会生活機能、脳の健康状態を高めると考えられます。
Li M, Shi Z. A Prospective Association of Nut Consumption with Cognitive Function in Chinese Adults aged 55+ _ China Health and Nutrition Survey. J Nutr Health Aging. 2019;23(2):211-216.
Bonyadi N, Dolatkhah N, Salekzamani Y, Hashemian M. Effect of berry-based supplements and foods on cognitive function: a systematic review. Sci Rep. 2022 Feb 25;12(1):3239.
Nemoto K, Kokubun K, Ogata Y, Koike Y, Arai T, Yamakawa Y. Dark Chocolate Intake May Reduce Fatigue and Mediate Cognitive Function and Gray Matter Volume in Healthy Middle-Aged Adults. Behav Neurol. 2022 Dec 13;2022:6021811.
日常的な食事が野菜や魚を中心とした地中海沿岸の伝統的な料理に近いと、脳の健康増進が期待できます。
アルコールと動物性食品の摂取量を見直すことは脳の健康維持を手助けします。
70歳の高齢者を対象に日常的な食事が地中海沿岸の伝統的な料理(地中海式)に近いかどうかを調べ、5年後に脳画像測定と脳機能テストを行ったところ、食事が地中海式に近いほど、脳全体の健康状態と脳機能テストの成績がよいことが示されています。
健康な大人を対象とした研究では、牛乳やヨーグルトは脳の健康状態への悪影響を抑制し、お米、牛肉やステーキは脳の健康状態を悪化させる可能性が示唆されました。
Titova OE, Ax E, Brooks SJ, Sjögren P, Cederholm T, Kilander L, Kullberg J, Larsson EM, Johansson L, Ahlström H, Lind L, Schiöth HB, Benedict C. Mediterranean diet habits in older individuals: associations with cognitive functioning and brain volumes. Exp Gerontol. 2013 Dec;48(12):1443-8.
Kokubun K, Nemoto K, Yamakawa Y. Fish Intake May Affect Brain Structure and Improve Cognitive Ability in Healthy People. Front Aging Neurosci. 2020 Mar 20;12:76.
十分に睡眠をとることで思考や行動を適切に制御しやすくなります。
実験では9時間の睡眠をとらせた大学生と、読書、ビデオ鑑賞、友人とのおしゃべりなどで睡眠をとらせなかった大学生に一定のルールを覚えてもらい画面を見ながらキー押しを行わせました。その結果、睡眠をとった学生は睡眠不足の学生に比べてルールに変更が生じたときに、それまで行っていた反応をおさえ、状況に応じて適切に行動する割合が高くなりました。
Chen J, Liang J, Lin X, Zhang Y, Zhang Y, Lu L, Shi J. Sleep Deprivation Promotes Habitual Control over Goal-Directed Control: Behavioral and Neuroimaging Evidence. J Neurosci. 2017 Dec 6;37(49):11979-11992.
平日にもくつろぎや休養の時間を取ることで、脳の健康状態維持が期待されます。
健康な大人を対象にした研究では、日々の睡眠、仕事、家事、食事、私用、通勤・通学、休養、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌、スポーツ、趣味、交友といった時間の使い方のうち、平日の休息や家事の時間の多さはGM-BHQの高さと、休日の休息時間の長さはGM-BHQの低下と関連がありました。
Nemoto K, Oka H, Fukuda H, Yamakawa Y. MRI-based Brain Healthcare Quotients: A bridge between neural and behavioral analyses for keeping the brain healthy. PLoS One. 2017 Oct 27;12(10):e0187137.
疲労がたまっているときにストレスを受けると、脳の健康状態が低下する可能性があります。
青年期にストレス対処方法を身に着けることでストレスの脳への悪影響を軽減することができます。
63名の健康成人を対象に疲労とストレスに関する質問紙回答と脳画像計測を行った結果、疲労とストレスと脳の健康状態の低下が関連することが示されました。
近年の研究では、子ども時代の慢性的なストレスは、脳の発達に悪影響を及ぼし、成人期のストレスに対する脆弱性を高めると仮説が立てられています。ストレス的な状況に意味と目的を与えたり、定期的に身体運動を行ったり、ストレス対処のプログラムを受講することで、慢性的なストレスの影響を改善することができます。
Kokubun K, Nemoto K, Oka H, Fukuda H, Yamakawa Y, Watanabe Y. Association of Fatigue and Stress With Gray Matter Volume. Front Behav Neurosci. 2018 Jul 24;12:154.
Lupien SJ, Juster RP, Raymond C, Marin MF. The effects of chronic stress on the human brain: From neurotoxicity, to vulnerability, to opportunity. Front Neuroendocrinol. 2018 Apr;49:91-105.
学習によって生じる達成感や興味は脳の健康状態向上と関連があるかもしれません。
目標をもって一連の行動を行う能力や処理速度のトレーニングにより、日常機能の向上が期待できます。
大人の参加者を週5日1回15分のお香のテイスティングトレーニングを2か月行うグループと学習を行わないグループにランダムに割り当てた研究では、グループ間で脳の健康状態の変化量の差が見られませんでした。しかし、トレーニンググループにおいて、達成感や興味、学習効果の実感は脳の健康状態向上にかかわっていることが示されました。
215の研究についてメタ解析した研究では、様々な認知トレーニングツールが対照群と比較して、健康な高齢者や軽度認知障害のある高齢者の認知機能の改善に緩やかな効果があることが示されました。認知機能は自立して生活できるための指標で、思い出す能力、目標をもって一連の活動を行う能力、言葉の流暢さや、推論、処理速度などが含まれています。
渡邉, 國分, 根本, 井上, 藤本, 遠山, 國井, 今村, 馬郡, 植田, 岡本, 山川. (2022). 産学連携を通じた持続可能なブレインヘルスケアサービスの実現, サービス学会第10回国内大会.
Basak C, Qin S, O'Connell MA. Differential effects of cognitive training modules in healthy aging and mild cognitive impairment: A comprehensive meta-analysis of randomized controlled trials. Psychol Aging. 2020 Mar;35(2):220-249.
子どものころに音楽の練習をすると、脳の機能向上が期待されます。
芸術創作活動を実践することで、脳の機能や生活の満足度の向上が見込まれます。
6歳から25歳までの参加者を2年の間隔をおいて2回または3回継続的に調査した研究では、音楽の練習は情報を保持しながら考える力の発達に良い影響を及ぼすことがわかりました。また、音楽奏者は楽譜の読解に関連するような脳の部位の健康状態も良好でした。
健康な高齢者を対象に、12週間の芸術創作活動を行ったところ、介入後に参加者のものごとを順序だてて行う能力や注意を切り替える力が改善され、生活の満足度も向上しました。
Bergman Nutley S, Darki F, Klingberg T. Music practice is associated with development of working memory during childhood and adolescence. Front Hum Neurosci. 2014 Jan 7;7:926.
Brown, C. J., Chirino, A. F. C., Cortez, C. M., Gearhart, C., & Urizar, G. G. (2021). Conceptual art for the aging brain: Piloting an art-based cognitive health intervention. Activities, Adaptation & Aging, 45(1), 39-69.
新しい状況や困難な状況において好奇心を発揮することは脳の健康増進と関連があります。
健康な大人を対象とした研究では、年齢や性別を考慮しても、未知のものについて学びたいという欲求やある課題を習得するまで長期間我慢する能力の程度が強い人は脳の健康状態が良好な傾向にあることがわかりました。
Kokubun K, Yamakawa Y, Hiraki K. Association between Behavioral Ambidexterity and Brain Health. Brain Sci. 2020 Feb 29;10(3):137.
大きな交通騒音や人の話し声にさらされると選択的に注意向ける力や、情報を保持する力が低下する可能性があります。
活動する室内の温度を適切に保つことや、休日に長時間座りっぱなしにしないことで脳の健康状態維持や不安の軽減につながります。
大学生を対象にした実験では、70dBの交通騒音を聞いているときは50㏈の交通騒音に比べて、注意を要する脳機能テストの成績が低いことが示されています。また人の話し声を聞いているときは無音や交通騒音に比べて、情報の保持をもとめる脳機能テストの成績が低いことが示されました。
健康な日本人成人を対象とした研究では、住宅の質(室内断熱と空間冷暖房)と、自宅での週末・休日の座りがちな行動は脳の健康状態を通じて、現在感じている不安と間接的に関連していることがわかりました。
Schlittmeier SJ, Feil A, Liebl A, Hellbr Ck JR. The impact of road traffic noise on cognitive performance in attention-based tasks depends on noise level even within moderate-level ranges. Noise Health. 2015 May-Jun;17(76):148-57.
Pineda JCD, Kokubun K, Ikaga T, Yamakawa Y. Housing quality and behavior affect brain health and anxiety in healthy Japanese adults. Sci Rep. 2021 Jun 7;11(1):11999.
自然の中で過ごすと、気持ちが楽になり、情報を保持しながら考える力が向上します。
大人を対象にした実験では、自然環境での50分の散歩は、都市環境での散歩と比較して、散歩前後のネガティブな気分の減少幅や、考えながら情報を保持する能力の上昇幅が大きくなることが示されました。
Bratman GN, Daily GC, Levy BJ, Gross JJ. The benefits of nature experience: Improved affect and cognition. Landsc Urban Plan. 2015 Jun;138:41-50.
かわいいを感じる感情の基盤は脳の健康に関わる可能性が示されています
大人を対象にした研究では、「かわいい」への興味関心・感じる程度の強さが、脳の健康状態推定に使用されうる幸福感・意欲・共感性の高さと関連していることが示されました。
梅沢、吉田、小笹、小巻、牧里、志賀、山川、三治.(2022). Kawaii感受性と脳の健康に関わる心理指標との関係性分析, 研究・イノベーション学会第37回学術大会.